東京家庭裁判所 昭和41年(少イ)6号 判決 1966年4月11日
被告人 光邦印刷株式会社
右代表者代表取締役 井上茂
前田隆治
主文
被告人光邦印刷株式会社を罰金三万円に処する。
被告人前田隆治を罰金五万円に処する。
被告人前田隆治が右罰金を完納することができないときは、金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
本件公訴事実中労働者大○篤に対し昭和四〇年九月二六日(日)から同年一〇月二日(土)の間、九月二七日(月)同二八日(火)、同二九日(水)、一〇月一日(金)、同二日(土)にそれぞれ一日一時間一五分の時間外労働をさせたとの事実については被告人両名は無罪
理由
一、罪となるべき事実
起訴状記載の公訴事実(但し主文第四項掲記の部分を除く)と同一であるからこれを引用する。
二、証拠の標目(編省略)
三、法令の適用
労働基準法六〇条三項、一一九条一号、一二一条一項、刑法四五条前段、四八条二項
被告人前田隆治に対して右の外刑法一八条
四、主文第四項掲記の公訴事実につき無罪を言渡す理由
大○篤は当該週のうち、九月三〇日(木)は有給休暇をとり、その日の労働時間は零である。したがつて同人は当該週には実際には四六時間一五分しか働いておらず、四八時間を超えた労働はしていない。そしてその週の中の一日は労働時間零であることは前記のとおりである。もつとも同人が九月三〇日(木)に出勤していたならば、予定通り一日九時間一五分の労働をさせられることになつたであろうことに認められる。しかし、現実には会社は同人をその週のうち一日はまるまる休ませたのである。事実が右の如くである以上、同人に対し「一週の労働時間が四八時間を超えず、かつ一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合でないのに」、一日につき一時間一五分の時間外労働をさせたものであるということはできない。使用者が違法な時間外労働をさせたか否かは、使用者の定める勤務時間によつてではなく、使用者が実際に労働者に労働をさせた時間によつて判断すべきものである。よつてこの点については被告事件が罪とならないものとして刑訴三三六条により無罪の言渡をする。
検察官石黒久[日卓]公判出席
(裁判官 三井明)
年少者時間外労働一覧表<省略>